きっとあなたにもある【深夜にぷぅ~んと芽生える殺意の話】
だんだん、日が長くなり朝の5時半には少し明るくなり、会社から帰るころはまだ遠くの山がほんのり赤く見える季節になってきた。
ついこの間までオレを悩ませていた寒暖差もやっと落ち着きを見せ、とても過ごしやすい。
1つの事を除いて…
これは昨日の夜中の話。
グッスリと眠っていたオレの足元になんとも言えない刺激が襲う。
沼の底から引っ張られるような感覚で深い眠りから引きずり出されたオレ。
か、痒い!!!!!
かけばかくほど痒い!!!!!
『奴かっ。オレの嫌いな虫ワースト3に入る奴がついに出てきた…!』
O型だからなのか何なのか知らないが、昔から奴はオレばかり狙う。
会社で何十人もいるオフィスの中で、オレの頭だけ奴に狙撃されたこと数知れず。
寝ぼけながらも瞬時にオレは自分が置かれた状況を察知し、耳栓を取る。
(小さな音で起きてしまうオレは普段耳栓をして寝ている)
そして、顔と手以外の露出部分を布団で覆う。
明かりは付けられない。なぜなら、横で妻と娘が寝ているのだ。
しばらくすると、オレの耳元で
ぷぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~ん
ピタ
バシッ!
オレは暗闇の中で自分の右頬をぶん殴る
ぷぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~ん
くそ、逃したか。奴はまだ生きてやがる。
オレの足をこんなカイカイにしやがって。
そもそも血を分けてもらったお礼に痒くするとか根本が間違っとるんじゃ。
オレは奴の理不尽さと安眠を邪魔された憎しみと殺意で完全に目が覚めた。
ここからは奴とオレとの一騎打ちだ。
ぷぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~ん
ピタ
バシッ!
ぷぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~ん
ピタ
バシッ!
なんだコイツ。右しか狙ってこない。右だけ凄く痛いじゃないか。
熱感知センサーとモーションセンサーシステムを搭載している奴。
暗闇で音だけが頼りのオレ。
ダメだ。暗闇での戦闘能力が違いすぎる。
諦めて、お布団に潜って眠ろうか…。
諦めの念が込み上げてくる。
いや、待てよ。
オレがお布団に潜って寝たら、次のターゲットは妻と娘じゃないか!
オレはなんて馬鹿野郎なんだ!!
しかし、オレでは奴に敵う気がしない。
このまま戦いを続けて、もし、矛先がオレの妻と娘に行ってしまったら…
仕方ない…最後の手段を使うか。
オレはお布団を剥ぎ、ズボンの裾と長袖シャツをめくりあげ大の字になった。
さぁ。喰らうがいい。オレで腹いっぱいにするがいい!
…
…
こうして、奴とオレとの深夜二時の激戦は幕を閉じた。
諦めたら痒さも忘れ意外と眠れたが、朝起きると見事に3か所特大カイカイスポットが出来上がっていた。痒いなぁ
しかーし
ふっふっふ。作戦通り。
まだ戦いは終わってないんだよ!
天井を見ると腹をプックリ膨らませて満足気にお休み中の奴を発見!
椅子に上ってプチッ
肉を切らせて骨を断つとはこのことじゃい( ゚Д゚)!
結局、妻と娘も2か所ずつやられてたけど、とりあえず戦いには勝ったということで
おしまい